高山農園のお米づくり
稲の栽培は稲刈り後から始まります
栽培は「田植えから収穫まで」と普通は考えるのですが、より安全、よりおいしいお米を作るには田植えまでにもたくさんのことをする必要があります。その準備は前年の稲刈り後から始まります。
田植えから稲刈りまで、田んぼでの栽培は4ヶ月前後ですが、それ以外の8ヶ月間の作業などをご紹介します。
田んぼを豊かにする"活きた土"づくり
稲刈り後~冬
稲刈り後のまだ気温が暖かいうちに肥料を散布して田んぼを耕起します。秋散布の肥料は稲を育てるためのものではなく、土の中の微生物のための餌になります。
餌があれば微生物はどんどん増えて活動し、稲ワラの分解、土のトロトロ層の構築などがすすみます。田んぼとは稲にとって胃や腸のようなもの、体内の微生物を活性化させて食べ残しなどを消化させます。ワラなどが未分解で残ってしまうとガスが湧いたり雑草が生えやすくなるので、秋のうちに田んぼの中をきれいな状態にしておきます。
田んぼが健康じゃないと稲も健全に育ちません。田んぼに棲む微生物や小さな生き物の力を借りて、田んぼの健康管理をすることが大切です。
高山農園は苗を水の中で育てます
3月~6月
稲は品種や栽培方法によって植える時期が違います。そのため、春の間は”苗を育てて、植えらえるようになったら田植えをする”ということを繰り返します。
苗とは稲の赤ちゃん。暑すぎても寒すぎてもダメ、乾燥や病気にも弱く、健全に育てるにはとても手がかかります。20~30日かけて2.5~3葉の約15cmの苗を育てます。
農薬使用について:育苗期間中は農薬は使用しません。通常栽培の場合は、種もみの消毒殺菌に複数の薬品を使用します。
塩水選(えんすいせん) 種もみを塩水につけて、中身が詰まっていない軽いものを取り除きます。良いモミだけを選別します。
温湯消毒(おんとうしょうどく) 60度のお湯に10分間漬けて種もみを消毒します。一般的には種もみの消毒には薬品を使います。
浸種(しんしゅ) 種を水に漬け込んで、吸水させます。生きているお米は10日間ほどで自然と発芽してきます。
播種(はしゅ) 種まきです。ベルトコンベアのような機械を使って、苗箱に土を敷いて種をまいていきます。
苗だし 種をまいた苗箱をビニールハウスの床に並べ、上からシートをかけて乾燥しないようにします。
出芽(しゅつが) 3日ほどで土から芽が出てきます。日光に当たっていないのでやや淡い色をしています。
プール育苗 1週間ほどで緑化し、2葉目がでてくるので水を張ります。苗の段階から田んぼのような環境で育て、早いうちから水に慣れさせます。
田植え前 さらに2週間ほどで田植えができるくらいの苗になります。土から上の葉よりも、体を支え、水と養分を吸収する”太い丈夫な根”を作ります。
田植え日でお米の味と収量が変わります
5月~6月
田植えの期日というのは、地域と品種でだいたい決まっています。コシヒカリは私たちの地域では通常5月中旬~下旬に植えるのですが、高山農園では6月中旬に植えます。普通よりも約1か月遅く植えるのには理由があります。
稲は穂が出てからの期間が暑過ぎると弱ってお米がうまく成熟しません。そのため、穂が出る時期がお盆過ぎの涼しい時期になるように田植えの時期を設定します。そうすると6月に入ってからの田植えになります。
農薬使用について:高山農園の減農薬栽培では田植え時にいもち病の予防薬と除草剤の2つを使用します。これが栽培の中で最初で最後の農薬使用になります。いもち病は地域的に多発地帯で、発病してからでは遅いのでどうしても欠かせません。除草剤は通常栽培だと2,3回やるのですが、高山農園では1回だけです。
農薬を使用しない田んぼの管理
6月~9月
田植え後の主な作業は畦道の草刈りです。草が伸びると通気性が悪くなって害虫や病気が発生したり、稲の日当たりが悪くなるので、ほぼ毎日草刈り機で作業をします。
また、山間の田んぼが多いのでイノシシが出ることが多く、電気柵やワイヤーメッシュ張りなどの害獣対策をする必要もあります。
無農薬栽培の田んぼ何もしないと水田内雑草が生え放題になるので、除草機を使って田んぼの中の除草をします。生え始めの最初が肝心なので、田植えの2,3日後から開始します。
農薬使用について:農薬は使用しません。この時期は通常栽培だと、除草剤の2,3回目や殺虫剤の散布などがあります。
チェーン除草 無農薬栽培の田んぼの除草。鎖で泥を引っ張って発芽したての雑草を抜きます。
中耕除草 こちらも無農薬栽培の田んぼの除草で、少し大きくなってしまった雑草を泥の中に埋め込んでいきます。
追肥 お米の収量と味を決める肥料です。有機肥料は化学肥料とは違って、最初にどーんとやるのではなく、稲の生育に合わせて量や施肥日を決めます。
溝切り ある程度稲が生長したら田んぼに溝を作って、乾かし気味に管理します。乾かすことで肥効を調整し食味をあげます。
畦道の草刈り ほぼ毎日の作業です。害虫や病気の巣になってしまうので真夏の炎天下でも朝から晩まで刈り続けます。
イノシシ対策 電気柵やワイヤーメッシュ、防獣ネットで田んぼを囲ってイノシシが入らないようにします。
海水の流し込み 通常の肥料だけでなく、ミネラルたっぷりの海水を流し込むことで食味の向上を図っています。海水は海まで汲みに行きます。
稲刈り後の作業でお米の品質が変わります
9~10月
穂が出てから40~50日ほどで稲刈りです。昼は暑く、夜は涼しい気候の中で成熟した稲は大きな穂をつけます。お米の水分が20-25%ぐらいになったら収穫です。
収穫したらお米作りは終わりではなく、さらに様々な工程によってお米の品質を上げていきます。最後の色彩選別まですると、スーパーやお米屋さんで販売しているくらいの見た目のお米になります。こうしてようやく販売可能なお米が出来上がります。
稲刈り コンバインで収穫し、籾(モミ:殻つきの玄米)をトラックに積んで運搬します。田植えと同じくらい時間がかかります。
乾燥 お米の水分が15%以下になるまで大型の乾燥機を使って乾燥させます。食味を下げないために自然に近い低温で乾燥させるのがポイントです。
モミすり モミ殻と玄米を分離させて、モミ殻を取り除きます。お米にモミが混ざらないよう確認しながら丁寧に行います。
石抜き 玄米に混入した小石を取り除きます。これをやるかやらないかで、ご飯の食感が大違いです。
選別 玄米を網に通して、小粒のものを取り除きます。高山農園では1.9mmの大きめの網目を使って選別しています。
色彩選別 色で選別する機械を使用して玄米から着色米や異物を取り除きます。この選別をすると見た目がきれいなお米になります。
袋詰め きれいになったお米を保存用の紙袋に詰めて玄米のまま保管します。精米は劣化を防ぐために、ご注文ごとに行います。