日本国内で品種登録されているお米の品種は1000種以上もあるらしく、数がありすぎて実際のところ生産者も把握していません。その中からいくつか品種を選んで栽培をするのですが、「選ぶ理由」というのを生産者の立場からお伝えさせていただきます。
1.種が売ってない
毎年冬の間に次の年の作付けを考えて種もみを注文するのですが、そもそも主要な品種の種しか売っていません。販売店のほうも売れないマイナーな種は取り扱って無いし、種子の生産者も栽培していないものがほとんどです。また、近年は種の取り扱いが厳しくて、利用には権利者の許可が必要な場合もあります。他県のブランド米の種なんかはまず手に入らないです。なので、「手に入りやすい品種」というのが理由の1つです。
2.お米の出荷先
珍しい品種のお米を栽培しても出荷先がなかったら売れないので、「出荷先がある」品種というのも大事です。有名品種=売れるお米なので、変わった品種を作る理由もあまり無いというのもあります。
3.県開発の品種
日本は南北に長く、地域によって気候条件が大きく異なります。そのため、その地域ごとの特性を生かして各地の農業試験場が、その土地の気候や土壌に適した稲が丈夫に育ち、安定して収穫できる地域オリジナルの品種を開発しています。「収穫量や品質が一定している」というのが特に重要で、だいたい県開発の品種を使ったほうが気候や環境に合っているので栽培もしやすいです。
4.高温障害対策
近年問題になっているのが高温による障害。最近の新品種はこの「高温障害に強い品種」がほとんどですが、実際に栽培をしてみるとそれほどでもないものが多いです。というのも、品種改良には何年もかかるので、開発初期と完成時の気候が大きく変わりすぎているというのもあるのでは?と思います。昔からあるコシヒカリやミルキークイーンなどは高温に対応していないので、まともに栽培するとかなりひどいことになりますね。
年々増える白いお米。乳白米や白未熟粒が明らかに以前より多くなっているのを実感しています。
5.おいしいお米
お客さんからのコメントで一番多いのが「おいしいお米」。「柔らかくてモチモチ」しているというのが一番好まれますが、人によって「好み」が違うので、意外と食感が異なるお米も選ばれます。「食感に特徴のある品種」というのも販売する側からするとバリエーションを増やす意味で栽培する理由の1つになります。
最初栽培したときは”なにこれ?”と思ったミルキークイーンの玄米。うるち米なのにもち米の特性を持っているので透明ではなく白く濁っています。
6.品種特性
お米の品種には「栽培適期」というのがあって、”この時期に植えると収穫が○○頃で、一番収量も良くなる。”というのがあります。作業の都合で同時期に一度に全部の田んぼに田植えをすることはできないので、何回かに分けて田植えをします。そのため、その田植えの時期に合った品種というのを選びます。
7.栽培区分適正
無農薬栽培や減農薬栽培だと、農薬を使わないのでどうしても病気対策をする必要があります。なのでそもそも病気にある程度耐性のある品種を使うと少し気分的にもらくになります。また、肥料も効率の良くない有機肥料なので、初期成育が良く分げつがとれやすい品種を選ぶと雑草対策にもなります。
無農薬栽培だと、苗を早く大きくして水面が見えなくなるくらいになれば、他の雑草は光合成できないので被害は少なくなります。
「コシヒカリ」の栽培がずっと続いているのは「美味しいというイメージが定着していて、誰でも知っている品種」というのが理由だと思います。ただ、栽培が気候に合わなくなってきているのが残念なところです。最近はコシヒカリに代わる良食味かつ高温耐性のある品種もあるので、そういったものを栽培してみるのもいいと思うのですが、やっぱり知名度の無い品種は売れない。新品種の開発時にアピールを怠ると悲惨なことになるので最近はどの県もブランド米のPRがすごいですね。売れるお米作り、品種選びは難しいです。




